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使い方 / v0.1

PocketWatch の使い方

「過去の出目から次を予測する」という発想は、公正なルーレットでは統計的に誤りです。PocketWatchが実際に検出しているのは、物理ホイールそのものの製造誤差・摩耗による「偏り」であり、その考え方と限界を説明します。

§1

なぜ「過去の流れ」は読めないのか

公正なルーレット(偏りのない物理ホイール、またはオンラインカジノのRNG抽選)では、各回転は完全に独立した試行です。赤が10回連続で出ようが、ある数字が長く出ていなかろうが、次の回転での各数字の確率は一切変わりません。「そろそろ出るはず」「この流れなら次はここ」という考え方は、統計学でギャンブラーの誤謬と呼ばれる誤りです。

PocketWatchは、この誤謬を土台にした「予測」機能を意図的に持ちません。その代わりに、公正であるはずのホイールが実際には公正でない(=各数字の出現確率が均等でない)可能性を、統計的に検証する機能を提供します。

§2

物理ホイールの偏りとは

実店舗の物理的なルーレット盤は、製造時のわずかな誤差や、長年の使用による摩耗(ポケットの仕切り=フレットの歪み、盤面の傾き等)によって、特定の数字やその周辺が理論値よりわずかに出やすくなることが実際にあります。これは「絶対バイアス(absolute bias)」と呼ばれ、プロのアドバンテージプレイヤーが実際に利用してきた手法です。

これはあくまで同一の物理ホイールを対象にした話です。オンラインカジノやRNG(乱数生成)抽選には物理的な盤自体が存在しないため、この考え方は一切適用できません。ディーラーが交代したり、ホイールが交換・整備されたりした場合も、それ以前のデータは無効になります。
§3

統計的な判定方法

PocketWatchは各数字の実測出現回数と、理論上の期待値(回転数 ÷ ポケット数)を比較するカイ二乗適合度検定を用います。

χ² = Σ (実測 − 期待値)² ÷ 期待値

この検定統計量から、正則化不完全ガンマ関数を用いてp値(この程度の偏りが偶然だけで起きる確率)を計算します。p値が小さいほど「偶然では説明しにくい偏り」があることを意味します。

サンプル数による3段階の判定基準

カイ二乗検定は回転数が少ないと信頼性が低く、数十〜数百回転程度の偏りは通常のランダムな揺らぎの範囲内です。PocketWatchでは回転数に応じて基準を分けています。

回転数段階判定基準動作
〜999データ不足(検定を行わない)常に「賭けるべきではない」
1,000〜9,999参考段階p<0.001 かつ |z|≥3.5基準を満たす場合のみ表示
10,000〜頑健な分析p<0.01 かつ |z|≥3.0基準を満たす場合のみ表示

この3段階・具体的な数値は、カイ二乗検定と残差分析に関する複数の文献(有意水準は0.1%〜5%の範囲、頑健な分析には数千〜1万回転超が目安とされる)を踏まえた、PocketWatch独自の保守的な運用ルールです。単一の公式な業界標準があるわけではなく、資金が関わることを踏まえて安全側に倒しています。

§4

残差(z値)の見方

どの数字が偏っているかを特定するため、数字ごとに残差を計算します。

z = (実測 − 期待値) ÷ √期待値

これは「その数字の出現回数が、期待値から標準偏差いくつ分ずれているか」を表します。プラスに大きいほど「出すぎている」、マイナスに大きいほど「出なさすぎている」ことを意味します。ランダムな範囲であれば大半の数字は-1σ〜+1σに収まり、±3σを超えるのは偶然としては起きにくい水準です。

37〜38個の数字を同時に検定しているため、まったく偏りのないホイールでも、偶然だけで1〜2個の数字がそれなりに大きなzを示すことがあります(多重比較の問題)。PocketWatchが|z|≥3.0〜3.5という高い閾値を要求しているのはこのためです。
§5

隣接ポケット分析

実際の物理的な偏りは、特定の1マスだけでなく、盤の傾きや摩耗によって物理的に隣り合った数字のまとまりに生じることが多いとされています。単一の数字だけを見る分析より、隣接ポケットをまとめて見る方が、少ない回転数でも実際の偏りを検出しやすい場合があります。

PocketWatchは実際のホイール配列(欧州式・米国式それぞれの本物の数字の並び順)に基づき、隣り合う5マスの合計を全ポケットについてスライドさせながら計算し、最も期待値からずれている窓を表示します。

§6

限界と注意点

§7

出典

欧州式・米国式それぞれの実際のホイール数字配列は、Wizard of Odds「Number Sequence in Roulette」に基づいています。